西郷吉之助の密書が発見されたというので読んでみた。
御直披御留丁可被下候
九月十六日夜薩藩西郷吉兵衛参
物語ニ者、弊藩之人数大坂表へ明日
明後日之内弐百五拾五騎相備大銃
五百同■共四挺引付置候、間部慈郷カンボウ万一暴政
之挿様相見え候得者、伏見迄引上け置
暴発ニ及候ハゝ早速起り立御手当方
計仕候、また土州も大坂迄人数為勝登
置候筈、(闕字)長州も兵庫迄人数百五
拾騎計為勝登置候筈ニ付暴□
仕候得者カンボウ位ハ一時々打払、直ニ
沢山城へ押懸ケ、一戦ニ踏潰可申
当時赤鬼関東へ人数多分呼たし*留丁:「留帳」のことか?
*カンボウ:不明。間部詮勝の呼び名か?
*暴政:「政」という字には「征と通じ、うつ」という意味があるので、「暴政」は幕府軍側にとって戦況が好転すること、西郷側にとっては反撃されることの意か?
*暴発:日本国語大辞典によれば「内にこもっていたものが、急激に外に現われ出ること」という意味があるので、戦況が好転することか?
*土州:土佐藩
*(闕字)長州:長州だけ闕字扱いに見える。
*一時々:本来なら「一時+二の字点」のはずで「いっときいっとき」。*当時:現在は過去を振り返るときに使う言葉だが、近世までは「現在、今」という意味。
(書き下し文)
御直披お留丁下さるべく候
九月十六日夜、薩藩西郷吉兵衛参り、物語るには、弊藩の人数大坂表へ明日・明後日のうち二百五十五騎あい備なえ、大銃
五百同■とも四挺引き付け置き候、間部慈郷カンボウ、万一暴政のそうようあい見えそうらえば、伏見まで引き上げ置き、暴発に及びそうらわばさっそく起こり立ち、お手当方ばかりつかまつり候、また土州も大坂まで人数勝ち登ぼらせ置き候はず、長州も兵庫まで人数百五十騎ばかり勝ち登らせ置き候はずにつき、暴□つかまつりそうらえば、カンボウくらいは一時一時打ち払い、じかに沢山城へ押し懸け、一戦に踏みつぶしもうすべく、当時赤鬼関東へ人数多分呼出し・・・
(大意)
直接開封され、メモ書きして置いて下さい。
九月十六日夜に、薩摩藩の西郷吉兵衛がやってきて話すには、うちの藩(薩摩)の軍勢を大坂へ明日・明後日のうちに255騎をそろえ、大銃
500同しく■とも4挺引きつけておき、間部慈郷、万が一にも攻めてくる様子が見えたならば、伏見まで撤退し、戦況が好転すれば、さっそく反撃できるよういたします。また土佐藩も大坂まで軍勢を進撃する手筈になっており、長州藩も兵庫まで軍勢を150騎ほど進撃する予定ですので、戦況が好転すれば、「カンボウ」くらいはそのときどきに追い払い、直接佐和山城(彦根城)へ攻め入り、一戦で踏みつぶしつもりでして、現在井伊直弼は江戸へ多くの家臣を連れ出しており・・・