日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

ファミリーヒストリー 石井竜也 明治後期 石井儀助宛石井靏次書簡を読む

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・・・万断仕候野生方一日無事御安
心被下成願候、
扨諸物価日々高直ニテ直下ノ品物ハ
□モ無之与先ツ安物ハ
□(米)一斗三升二合小豆三升五合位
□(大カ)豆二斗位、大根百本
諸材抔ハ別而高直
取極之次第ニこ座候所諸式節
倹を旨とし施懈も在之候条
御安心被下度候

 


*野生:男性が自らを謙遜する一人称。


*高直:現在は「高値」と書くが、以前は「高直」だった。「直」で価値を意味する。

 

*施:「施術」のように効果を期待して行うこと。

 

*懈:「たゆい」疲れやだるさ。

 


(書き下し文)

 


・・・よろず断りつかまつり候、野生方一日無事ご安心なしくだされ願い候、
さて諸物価日々高直にて直下げの品物は□もこれなきと、まず安物は米一斗三升二合、小豆三升五合位、(大カ)豆二斗位、大根百本、諸材などは別して高直取り極めの次第にござ候ところ、諸式節倹を旨とし、施懈もこれあり候条、ご安心くだされたく候

 

 

(大意)


・・・すべて断りました。小生の方は一日無事に過ごしましたので、ご安心くださいますようお願い申し上げます。
さて、諸物価は日々高値でして値が下がる品物はありませんでしたので、まずは安価な米を1斗3升2合、小豆3升5合くらい、大豆2斗くらい、大根100本を買いましたが、ほかの品物はことのほか高直に取り決めている事情があるので、すべて節約に努め、疲れもとれましたので、どうかご安心ください。

 

1斗は約18リットル、1升は1.8リットル。十進法で上から順に「石斗升合勺」の単位がある。

 

灯油が18リットル単位なのはこのせいか?米屋が健在だった頃は、「升」や「斗」で売買していた。これらは容積=体積の単位だが、スーパーで売られるようになった頃から重量売りにいつの間にか変わった。容積=体積は気圧や気温で変化するし、枡で量る際にもごまかしが利く。その点重量は変化しないから、より厳密に扱うようになったということになる。