日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

英雄たちの選択 秀吉VS“山城”スペシャル 第2夜にて紹介された天正18年7月27日南部信直宛豊臣秀吉朱印状を読む

こちらに詳しい解説がある。

 

http://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kyoiku/e-kyodokan/files/2010-0604-1454.pdf

 

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南部の「部」は原文では 〓

 

  

  覚

一、南部内七郡事、大膳大夫可任覚悟事、

一、妻子定在京可仕事、

一、知行方、令検地台所入丈夫ニ召置、在京之賄相続候様ニ可申付事、

一、家中之者相拘諸城悉令破却、則妻子三戸江引寄可召置事、

一、右条々於異儀者在之者、今般可被加御成敗候条、堅可申付事、

    以上

 天正十八年七月廿七日(秀吉朱印)

       南部大膳大夫とのへ

 

(書き下し文)

   おぼえ

ひとつ、南部内七郡の事、大膳大夫覚悟にまかすべき事、

 

ひとつ、妻子京に定在つかまつるべき事、

 

ひとつ、知行方、検地せしめ台所丈夫に入れ召し置き、在京のまかない相続候ように申し付くべき事、

 

ひとつ、家中の者あいかかえる諸城ことごとく破棄せしめ、すなわち妻子三戸へ引き寄せ召し置くべき事、

 

ひとつ、右の条々異儀の者これあるにおいては、今般御成敗を加えらるべく候条、かたく申し付くべき事、

    以上

 

 

 

 

 

*南部内七郡:

 

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*大膳大夫:南部信直

 

*台所:財政状況

 

*丈夫:確実なさま

 

*召置:「めしおく」臣下として召し抱える。

 

*在京之賄:在京賄領と呼ばれ、上京したさいの予算をまかなうために京都近国に土地が与えられるが、ここではそのことを指すのか、それとも三戸城下に集住させたさいの家臣への支払についてのことなのか判断できない。ただ、冒頭に「知行方検地せしめ」とあるところから、南部家中のことと思われる。

 

 

*家中之者相拘諸城悉令破却、則妻子三戸江引寄可召置:この命令から、秀吉の政策として、農村から家臣を引き離す兵農分離といわれている。

 

 

*一、右条々於異儀者在之者、今般可被加御成敗候条、堅可申付事、:通常この部分は「ひとつ書き」ではなく、全体を修飾する形式をとる。文末で「以上」や「仍如件」などの書き止め文言に連なるはずで、いわば書き損じなのだが、このまま秀吉は発給してしまったようだ。「どうせわかるまい」と高をくくったのかどうかはわからない。