日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの古文書オタ、いえ歴史学徒として史料を読んでいきます

伊賀惣國一揆掟書案を読む その3

『中世法制史史料集 第五巻 武家家法Ⅲ』106~107頁、山中文書

(五条、六条)
一、國中之あしかる、他國へ行候てさへ城を取事ニ候間,國境二従他国城を仕候て(「ハゝ」カ)、足輕として其城を取、忠節仕百姓有之ハ、過分二褒美あるへく候,そのミニおゐてハ、侍二可被成候事、
一、他國之人数引入候仁躰於相定ハ、惣國として兼日ニ發向被成、跡ヲ削、其一跡を寺社へ可被置付候、井國之様躰内通仕輩あらハ、他国之人数引入候同前たるへく候、他国之人数引入候とある物云之仁躰有之ハ、失之誓段二て□しん候て、可被曝候事、

 

 

(書き下し文)

 

ひとつ、國中の足軽、他國へ行き候てさえ城を取ることに候あいだ,國境に他国より城をつかまつり候はば、足輕としてその城を取り、忠節つかまつる百姓これあらば、過分に褒美あるべく候,その身においては、侍に成らるべく候こと、
ひとつ、他國の人数引き入れ候仁躰あいさだまるにおいては、惣國として兼日に発向なられ、跡を削ぎ、その一跡を寺社へ付け置かれるべく候、ならびに国の様躰内通つかまつる輩あらば、他国の人数引き入れ候同前たるべく候、他国の人数引き入れ候とある物言いの仁躰これあらば、失の誓段にて□しん候て、さらさるべき候こと、

 


(大意)


ひとつ、当国の足軽は、他国へおもむいて城をとることさえあるので,くにざかいに敵が城を構えたならば、足軽としてその城を取りに行き、忠節を尽くす百姓がいたなら、多めに褒美を出しなさい。そしてその者の身分は、百姓から侍に取り立てなさい。
ひとつ、他国の者どもを仲間に引き入れ、その話が固まったら、惣国としてあらかじめ軍勢を向かわせ、その者の全財産を一時的に寺社が預かり帳面に書き記しなさい。また国の様子を伝えてくるものがあれば、他国の者どもを仲間に引き入れた場合と同等に扱い、褒美を出しなさい。他国から内応者を引き入れたと口にする者がいたなら、誓いの場所において神判を受け、うそと判明したら晒しの刑にしなさい。

 

 

 

*内通:内々に話を通しておくこと

 

*一跡:後継ぎに譲る遺産、転じて全財産。


*物云:「物言」ここでは「耳なれない、聞きなれないことを、巧みに話す人」(日葡辞書)から「他国の者を仲間に引き入れたと吹聴する者」の意味。後段の「失の誓段にて□しん候て、さらさるべき候こと」とあることから湯起請や鉄火起請などで「神判」を受け、その結果それが偽情報だと「発覚」したさいは、「さらす」つまり磔刑か獄門などのような刑罰に処しなさい、という意味。

 

*失:失うには「殺す」の意味があり、「失沙汰」(うしないざた)で「処刑する」という意味になる。

 

*誓段:日本国語大辞典はこの文書を例示して「誓いを立てる場所」とする。