日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの古文書オタ、いえ歴史学徒として史料を読んでいきます

昭和15年1月11日外務大臣野村吉三郎宛在カウナス領事代理杉原千畝発機密第十四号文書を読む

杉原千畝」で検索すると公開されている文書が読める。

www.jacar.archives.go.jp

 

これを今回読んでみる。ただし人事課長などの決裁印は省略した。

 

機密第十四号(見せ消ち)        

              昭和十五年一月十一日

                  在「カウナス

                  領事代理 杉原千畝(印)

外務大臣 野村吉三郎殿

  管内「ウィルノ」定期出張許可方稟議ノ件

当館(ママ)「ウィルノ」及其以東方面ニ対スル情報蒐集工作ニ付テハ客年十一月十一日附機密第十八号絶信中ニモ申進メ置キタル通、本官ニ於テ「ウィルノ」諜者トノ連絡ヲ円滑並徹底セシムル為同地ニ定期的ニ出張スルノ必要痛感セラレ、依テ今後館務ノ都合ヲ見計ヒ出来得レハ毎月一回乃至二回定期出張(「カウナス」・「ウィルノ」間往復汽車賃「り」貨参拾壱「リット」六拾仙、旅程ハ日帰り又ハ一泊)致度処、其都度前以テ稟請ノ上御許可ヲ仰ク場合ハ先方ト会合ノ機ヲ逸スルコトモアルヘキ等、種々ノ支障ヲ生スヘキ儀ニ付、尓今ニ対スル本件定期出張方御詮議ノ上御許可相成度、此段稟請ス、

  追而 本件御許可ノ場合ハ其旨御電報相成様致度

 

 

(書き下し文)

   管内ウィルノ定期出張許可方稟議の件

当管ウィルノおよびそれ以東方面に対する情報収集工作については、客年十一月十一日づけ機密第十八号絶信中にも申し進めおきたるとおり、本官においてウィルノ諜者との連絡を円滑ならびに徹底せしむるため、同地に定期的に出張するの必要痛感せられ、よって今後館務の都合を見はからいできうれば毎月一回ないし二回定期出張(「カウナス」・「ウィルノ」間往復汽車賃「り」貨三十一リタス六十ツェンタス、旅程は日帰りまたは一泊)いたしたきところ、そのつど前もって稟請のうえ、ご許可をあおぐ場合は先方と会合の機を逸することもあるべきなど、種々の支障を生ずべき儀につき、自今に対する本件定期出張がたご詮議のうえ、ご許可あいなりたく、この段稟請す、

  追って 本件ご許可の場合はその旨ご電報あいなるよういたしたし、

:この部分のみ墨書でほかはペン書きと思われる。在ラトヴィア臨時代理公使「佐久間信」の「佐」の署名カ。

こちらの文書に「在ラトヴィア臨時代理公使佐久間信」と印刷されている。

www.jacar.archives.go.jp

 

*ウィルノ:ヴィリニュス

 

*其以東方面:ソビエト連邦を含むヴィリニュスより東の地方。

 

*客年十一月十一日附機密第十八号絶信中ニモ申進メ置キタル:昭和14年11月11日付で文書を電信にて送信後、1ヶ月間連絡が途絶していたらしい。

 

* 汽車賃「り」貨参拾壱「リット」六拾仙:「リトアニア貨幣31リタス60ツェンタス」。「仙」は普通「セント」。

 

リタス - Wikipedia

 

 

* 其都度前以テ稟請ノ上御許可ヲ仰ク場合ハ先方ト会合ノ機ヲ逸スルコトモアルヘキ等、種々ノ支障ヲ生スヘキ儀ニ付:出張の度に外務大臣にうかがっていては、情報提供者(=「諜者」)と会う機会を逃すなど、さまざまな不都合を生じるため。

 

* 尓今:爾今

 

 

そのほかにも「杉原千畝」で検索するとヒットする。インターネットで公開されているものがすべてではないが、