日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

「おんな城主 直虎」最終回に登場する文書を読んでみる

史料1 天正3年5月20日山上六左衛門外宛織田信長黒印状

 

為褒美茶碗一

天目差下候也、

  天正(三年)五月二十日        信長(黒印)

  山上六左衛門殿

  ??越後守殿

 

(書き下し文)

 

褒美として茶碗ひとつ天目差し下し候なり

 

 

 

 史料2 天正14年月日未詳徳川家康宛某言上状

 

言上  (闕字)     抑

(当)方居住干遠江国引佐郡井伊谷

龍澤寺會先代及萬千代殿其外

井伊家被官并其子女等致養育

候奉對(平出)

三河守様江萬千代殿江可申傳候様

一筆奉申上候先日(闕字)井伊谷先代被

遊御隠候間可悲事候(闕字)先代者持大

藤寺殿笛候而於井伊谷之井戸被

倒心安面差に御座候迄聞及候近時

容態不健候得者臥候事婁々有之

候共余に早最期ニ而候、井伊谷者共

同様我等暮悲嘆歎申候、(闕字)先代常・・・

被申候ハ未練事等無御座候得・・・

於末期生存得度と庶幾候、自・・・

・・・或者武家或者凡下之輩・・・

・・・・・・當家(闕字)徳川・・・

  

 

*暮悲嘆:悲嘆に暮れ

*生存:「生きながらえる」

*庶幾:「こいねがう」

 

 

(書き下し文)

 

そもそも当方遠江国引佐郡井伊谷龍澤寺に居住し、先代および萬千代殿そのほか井伊家被官ならびにその子女などと会し養育いたし候、三河守様へ対し奉り、萬千代殿へ申し伝うべく候よう一筆申し上げたてまつり候、先日井伊谷先代御隠遊ばされ候あいだ悲しむべき事に候、先代は大藤寺殿笛を持ち候て井伊谷の井戸において心やすらかなる面差しに倒れられござ候まで聞き及び候、近時容態健やかならず候えば臥し候事るるこれあり候ともあまりに早き最期にて候、井伊谷の者ども同様我等悲嘆にくれ歎き申し候、先代常・・・申され候は未練事など御座なく候え・・・末期において生きながらえ得度とこいねがい候、・・より・・・あるいは武家あるいは凡下の輩・・・当家徳川・・・

 

*先代:井伊直虎

三河守:徳川家康

*御隠:亡くなる

*凡下之輩:身分の低い人々、百姓