日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

元禄15年12月16日浅田金兵衛宛浅田孫之進充清書状(浅田家文書)を読んでみる

 先日BS放送で紹介された吉良邸討ち入り直後にしたためられた書状をここで読んでみたい。

 

(前略)

  

且又此十四ゟ之夜七ツ時吉良上野介殿屋鋪本庄ニ御座候、此所江浅野内匠頭殿御家来都合四十七人主人之敵討ニ表并裏両方ゟはしこ掛、内へ入、首尾能上野介殿打抑芝江引取申候、何茂出立着込之上黒羽二重紅裏小袖浅黄股引、鑓抔不残勝時作り、彼上野介殿首ヲ断さけ帰候由、江戸中之手柄ニ御座候色々成事出来申候、度此一乱出来可仕と人々申候、其外変儀無御座候、恐惶謹言

                                                      同孫之進

極月十六日                                       充清(花押)

 浅田金兵衛様

      人〻御中

 

(書き下し文)

かつまたこの十四(日脱カ)よりの夜七つ時、吉良上野介殿屋鋪本庄にござ候、このところへ浅野内匠頭殿御家来都合四十七人主人の敵討ちに表ならびに裏両方よりはしご掛け、うちへ入り、首尾よく上野介殿打ち抑え芝へ引き取り申し候、いずれも出立着込の上黒羽二重・紅裏小袖・浅黄股引・鑓などのこらず勝ち時つくり、かの上野介殿首を断り裂け帰り候よし、江戸中の手柄にござ候、いろいろなる事出来申し候、このたび一乱出来仕るべきと人々申し候、そのほか変儀ござなく候、恐惶謹言

 

 

 

*夜七ツ時:午前4時頃

*本庄:本所のこと

*芝:泉岳寺

*勝時:勝ち鬨

*度此:この度

*出来:「しゅったい」物事などが起きること。

*このたび一乱出来仕るべきと人々申し候:この文書の前半部分で物価高騰と凶作によって「難儀」していると述べていることから、「こういったご時世だからこのような大騒動が起きるべくして起きた、と人々が口にしている」という意味かと思われる。