日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの古文書オタ、いえ歴史学徒として史料を読んでいきます

ドラマ「アシガール」の手配書を読んでみる 

話題になっている手配書を読んでみる。画像はこちらから。

 

 

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 http://pbs.twimg.com/media/DMpz85UUQAASRB2.jpg:small

 

 

    手配書

梅谷村足軽唯之助

(似顔絵)

右者高山方と内通之疑有之候故、取締

方目下探索ニ及候也、見附候者ハ即刻

届可申事、應分之褒美被取候者也、

 八月三十日

    奉行

 

(書き下し文) 

右の者(または「右は」)、高山方と内通の疑いこれあり候ゆえ、取締方目下探索に及び候なり、見附け候者は(または「見附そうらわば」)即刻届け申すべきこと、応分の褒美取らせ候ものなり、

 

字体や言い回しはかなりうそくさい。当たり前の事だが。ただこういう文書を持ち出して「我が祖先は・・・」などと言おうものなら大変な事になるのでやめておいた方がよい。

 

数年前ある自治体の長が記者会見で借用証文を見せたとき、経年劣化がまったく感じられないものだったので違和感を覚えたことがある。字体や言い回しだけでなく、紙字体の状態も様々な情報をもたらすので馬鹿にしてはいけない。

 

もっとも戦国期にこういった人相書きのようなものがあったかどうかはわからない。だいたい陣触を役人が読み聞かせる場面で、黒島結菜が文書を手に取った際、周囲の村人が「おまえ字が読めるのか?」と言ったように、読み書きできる者やなんとか読める者、あるいはまったくの文盲だった者など識字能力は階層ごとに異なっていたから、ああいった場面では誰かが音読して聞かせる手段が必要だったはずだ。陣触と手配書の場面を比較すると、設定としては一貫性にやや欠けると思う。

 

しかしむかしの時代劇は文字の形も文面も形式もまったくの出鱈目だったし、現代ドラマで新聞や週刊誌の記事が大写しになったとき見出しだけドラマの内容と一致するが、記事自体はまったく無関係だった頃とくらべれば小道具は長足の進歩を遂げたといえる。

 

 

カンバーバッチ主演のドラマ「シャーロック」のある回は、冒頭「Ostalgie=オスタルギー」(Ost=オスト=東、Nostalgie=ノスタルギー=郷愁からの造語で「旧東ドイツ時代へのノスタルジー」という意味)の話題から始まるが、ワトソンの妻が突然失踪し、海外へ追いかける場面でとんでもない手抜きがあった。画面に航空機の行先表示板があらわれるのだが、そこには「USSR」(ソビエト社会主義共和国連邦)だの「E.Germany」(旧東ドイツ、正式にはドイツ民主共和国DDR)だの「W.Germany」(旧西ドイツ、正式にはドイツ連邦共和国、この名称は東西統一後現在まで続く、BRD)だの現存しない国名ばかりが散りばめられていたのだ。「オスタルギー」はそれらの国が消滅したからこそ生まれた言葉なのに、である。

 

おかげでネタが増えるので悪いことではないと思うが。