今日は第7条を読む。
一、漆之事、是又其村々ニて大形見斗、米つもりニ成共、又ハ銭つもりニ成共、但シうるし成共相定可書載、是ハ屋敷ニて無之所在之うるし事にて候、畠ニ在之うるしも畠主進退たるへき也、上分ニハ成ましき也、然ハうるしの木在之屋敷并畠、上畠ニて可在之事、
(書き下し文)
ひとつ、漆のこと、これまたその村々にておおかた見計らい、米つもりになるとも、または銭つもりになるとも、ただしうるしなるともあい定め書き載せるべし、これは屋敷にてこれなきところこれあるうるしにて候、畠にこれあるうるしも畠主進退たるべきなり、上分にはなるまじきなり、しからばうるしの木これある屋敷ならびに畠、上畠にてこれあるべきこと、
*其村々:踊り字「々」は引用書では「二の字点」。
*屋敷ニて無之所在之:この部分は言い回しが不明瞭だったので、長浜市立長浜城歴史博物館『石田三成第二章』(2000年)にある写真(28頁)で確認してみたがこの通りだった。ただ、この文書自体が写であり、写の作成者による誤写の可能性は残る。原本の発見が望まれる所以である。
*進退:土地、人間、財産などを自由にあつかうこと。のち「シンダイ」に転訛し身代の字が当てられるようになった。
*上分:広くは土地を下地というのに対して、そこから上がる収益をいうが、狭くは年貢のうち神仏(寺社)へ納めるものを指す。これを元手に寺社は貸し付けを行っていた。ここでは、領主と作人のあいだにいる地主への小作料や地代のことと思われる。
*上畠ニて可在之事:上畠の石盛で検地帳に記載しなさいという意味。
(大意)
ひとつ、漆のこと、これもまたその村々の概要を調べたうえで、米を基準にしても、または銭を基準にするしても、あるいはうるしを基準にしてもいいからいずれかに決め、検地帳に記載しなさい。これは屋敷地ではないところにあるうるしとして扱いなさい。畠にあるうるしも畠主がすべてを決めることである。上分にしてはならない。うるしの木がある屋敷や畠は上畠として石盛を記載しなさい。
ここでは漆の木を屋敷地内や畠にある場合とそうでない場合に区別し、年貢の上納基準を定めるようにと命じている。前者の場合は「上畠」なみとし、後者の場合は米(石単位)、銭(貫文単位)、漆(律令制下では本単位だが、この頃は未確認)いずれでもよいから基準高を検地帳に記載せよ、としている。
もうひとつ注意したいのは、上分にはするなと命じている点である。地主の取り分にせよ、寺社への上納物であるにしても、領主と直接の耕作人以外に土地から上がる利益を配分するな、ということになる。
裏を返せば、そういった利益が様々な権利として存在していたことになる。