日本中近世史史料講読で可をとろう

ただし、当ブログは高等教育課程における日本史史料講読の単位修得を保証するものではありません

日本中近世史料を中心に濫読・少読・粗読し、各史料にはできるだけ古文書学に倣い表題をつけ
史料講読で「可」を目指す初学者レベルの歴史学徒として史料を読んでいきます

年未詳11月10日川辺掃部介宛明智秀満書状をちょっと読む???

shirobito.jp 上記の記事に紹介されている明智秀満書状を読めるところだけ読んでみた。 (軸装のため形態未詳) 態申越候坂本広間のふすましやうし同引手并くきかくし何も不可申くたき由申越候間??遣(継目)計諸事無油断可申付候少も疎略ニ候段有間敷候恐…

文明12年2月11日日野富子宛後土御門天皇自筆書状をちょっと読んでみる

まもなく*1閉幕する「日本の中世文書」展のうち、数行だけ読めたと錯覚した女房奉書を、図録『日本の中世文書』267頁の釈文を頼りにちょっと読んでみた。 なおこうした散らし書きは過去のものでない。偶然見た通信高校講座の書道でも扱っていた*2。 出典:国…

慶長3年3月14日発智新左衛門尉宛隼人人身質入借米状を読む 追記

以前読んだ人身借米状に見える「隼人」について、佐藤前掲書279頁、註4にしたがい「下級武士か」としたが、武士にしては名字もなければ花押もなんだか稚拙に見える。もう少し考えてみたい。 japanesehistorybasedonarchives.hatenablog.com 慶長3年1月10日、…

官兵衛紀行第36回、求菩提山宛黒田孝高外2名連署制札の解釈

ドラマ「軍師官兵衛」36話の「官兵衛紀行」において、次の文書が紹介された。 Fig.1 それをこう読んでいる。 Fig.2 この画面にナレーションがこう流れる。 「狼藉や喧嘩をする者は成敗する」と各所にお触れを出しています なるほど「各所」に目をつぶれば「…

慶長3年3月14日発智新左衛門尉宛隼人人身質入借米状を読む

出典 佐藤進一『新版古文書学入門』口絵40頁、68号文書、法政大学出版局、2003年 借用申米之事 合三石者 右に如申定それかしの子共のはゝをしつもつ*1に 慶長三年より同四年まて指おき申候 それかしてまい*2いてき候ハゝわひ事*3申めし いたし可申候若又くら…

近世初期検地帳に見る百姓のおなまえっ!

天正から文禄年間にかけての近世初期検地帳を眺めていると、ときどき偉そうな名前を名乗っている百姓に出くわすことがある。 Fig.1 文禄3年10月摂州[虫損]郡椎堂村御検地帳 文禄3年「椎堂村検地帳」 イには「とくら 惣作」、ロは「同ノ 彦衛門尉」、ハは「…

「鎌倉時代から姓を名乗るのをやめ、名字のみになった」のか?

先日名前に特化したバラエティー番組を見た。そこで「平安時代に姓と名前のあいだにある「の」が、鎌倉時代には名字を名乗ることにより消えた」という話を聞いた。バラエティー番組に対して大人げないとは思うが、史料的にはむしろそうでないことを示す例が…

ファイリングされた文書「綴」 「戦死屍仕末金諸入用帳」について

古文書は形態により、折紙、竪紙、続紙などの一紙もの(「状」と呼ぶ)と竪冊(竪帳とも)、横冊(横帳とも)、横半帳などの冊子体(「冊」、「帳」などと呼ぶ)に大きく分けられる。後者の冊子体はあらかじめ冊子にしたあとで書き込むもので、当然記載に過…

天正10年6月10日溝口半左衛門尉・同久介宛柴田勝家書状を読む???

新発見勝家書状の続報である。 www.msn.com 全体 切紙を糊で貼り継いだ続紙 イ「五郎左」=丹羽長秀 ロ「明知」=明智光秀 ハ「上様」=織田信長 傍線部①には「昨日九日至越前北庄江令帰陣候」、「昨日九日、越前北庄へいたり帰陣せしめ候」とあり、天正10年…

新発見の柴田勝家書状の注目すべき保存状態

また文書の新発見があった。 www3.nhk.or.jp 今回は文書の伝来と形態について述べてみたい。 古代・中世の文書は掛け軸などに表装されていることが多く、必ずしも原形を現在に伝えているとはいえない。骨董市場に出回る物も多くが表装されており、なかには天…

天正13年5月4日黒田孝高宛羽柴秀吉朱印状を読む

2014年NHK大河ドラマ特別展「軍師官兵衛」展示図録、93号文書、90頁 (折紙)急度申遣候仍長曽我部為成敗至尓四国来月三日此方*1出馬渡海候成其意*2其以前も為先勢淡州*3へ可有着岸候聊不可有由段者也 五月四日*4 秀吉(朱印) 黒田官兵衛尉殿 (書き下し文…

正徳6年5月3日長井又兵衛宛木津伊之助起請文を読む?

www.chunichi.co.jp www.yomiuri.co.jp www3.nhk.or.jp (竪紙) 敬白天罰灵*1社起請文前書 一、今度御流儀忍術御伝授忝奉存候然者御 相伝之忍術忍器共ニ喩親子兄弟たりと いふ共他見他言仕間敷候尤知ぬ躰ニもてなし*2 人ニ写させ申間敷候 一、萬川集海*3之…

萬暦19年8月21日島津義久宛尚寧王書状を読む

国立歴史民俗博物館図録『日本の中世文書』6-16号文書、176頁 (竪紙) 今春直林寺*1為使節下向無恙上着*2候 哉然者為関八州追伐之祝儀*3今度紋船*4 令渡海万端可然之様御調達憑入*5候国 家*6衰微之間雖不献方物*7表楽人*8等之 儀式為使節差上建善大喜和尚茂…

天文12年9月24日石雲寺宛北条長綱朱印状を読む

http://www.city.isehara.kanagawa.jp/docs/2018102900096/file_contents/181101-4-5.pdf (折紙) 任虎印判*1旨 伝*2役諸役其 外横合*3令停止 并竹木以下違 乱於申懸者急度 可申越者也仍 如件 天文十二(朱印) 九月廿四日 石雲寺*4 (書き下し文) 虎の印…

「千利休切腹事件」について「大日本史料」と「大日本古文書・伊達家文書」はどう扱っているか

「大日本史料」編纂は明治政府が六国史の後継事業としてはじめたものであるが、編年史料集としてもっとも網羅的なものである。「大日本古文書」や「大日本古記録」などをもとに編まれた、巨大な年表をかねた史料集といえる。 もっともそれ故に、慶安4年まで…

天正11年3月晦日羽柴秀長宛羽柴秀吉判物を読む

2014年NHK大河ドラマ特別展図録『軍師官兵衛』86号文書、86頁 図録では「書状」とするが、文頭に表題が掲げられていること、「御宿所」「人〻御中(おんなか)」などの脇付が記載されていないこと、書き止め文言などから当ブログでは判物とした。なお『豊臣…

天正11年4月29日狩野秀治・直江兼続宛羽柴秀吉書状を読む

寺内織部方下国候之条、令啓候、仍去廿一日於柳瀬*1表合戦様子并柴田*2切腹相果趣、委細景勝へ申入候之間、委不及申、然者賀州・能州・越中属一篇候之条、国之置目等為可申付、至金沢城令逗留候、就中柴田謀反之刻、秀吉至越前表於令乱入*3者、可有御手合*4…

元亀3年3月18日長命寺宛柴田勝家書下を読む

安土城考古博物館で下記の特別展が開かれているそうで、展示番号16番の柴田勝家発給文書を読んでみる。 特別陳列「重要文化財指定記念 長命寺文書展」 | 滋賀県立安土城考古博物館 画像はこちら http://azuchi-museum.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/20…

永禄2年10月19日口羽通良宛毛利元就書状を読む 2018年10月9日放送「開運!なんでも鑑定団」

鑑定額800万円の毛利元就書状だが、その釈文にやや問題がある。 なお、全体はこちらを参照されたい。 www.tv-tokyo.co.jp まず青い丸で囲った部分の「踊り字」が「二の字点」=「〻」で翻刻されているところは驚きである。NHKなどの歴史番組はこういった基本…

慶長6年4月17日松井康之宛片桐且元ほか3名連署奉書を読む

八代市立博物館蔵 http://www.city.yatsushiro.kumamoto.jp/museum/event/2009/matsuimonjo/17.jpg (折紙) 一書申入候仍豊後 国之内速水郡*1 之残壱万七千百 六拾石余之分 御代官*2御給人*3 被為付候内其方へ 当座預ケ置申候 条仕置等可 被申付候重而*4 御…

天正18年7月25日佐竹義久宛嶋清興書状を読む????  その1

前回に続いて嶋清興書状を読んでみる。 www.nikkei.com www.sankei.com mainichi.jp (折封ウハ書) (折紙) (折封ウハ書) 「東中*1様 御陣所 嶋左 清興」 尚々不及申候へ共 いつれのことも無御 失念様専一候以上 □(一カ)今日者不申承候仍上様*2明日御…

元和5年3月21日洞林寺宛小笠原忠政判物を読む

www.kobe-np.co.jp (竪紙) 播州加東郡垂井村住吉 社領高拾石并山林竹木任 先規令寄附候弥以神事 祭礼等無退転*1可相勤 者也 小笠原右近大夫 元和五年三月廿一日 忠政(花押) 神主 神宮寺 (書き下し文) 播州加東郡垂井村住吉社領高十石ならびに山林・竹…

「人国記」より「備後国国民性」を読む

あるCMが頭から離れない。広島県東部にあたる国名を連呼するあれだ。その地域の方も使うのだろうか。駅名は落合、庄原、西条、赤坂など多数あるので混同しないのだろうか。疑問は尽きない。 備後の国の風俗は、人の気実儀*1にして、一度約をしたる事は変改す…

天文15年9月三条御蔵町宛細川国慶禁制を読む??????

www.sankei.com 禁制 三条御蔵町一、当年軍勢乱妨狼藉事一、剪採竹木事一、相懸矢銭兵糧米事右堅令停止訖若於違犯輩者可処厳科者也仍下知*1如件 天文十五年九月 日 玄蕃頭源(花押) (書き下し文) 禁制 三条御蔵町ひとつ、当年軍勢乱妨・狼藉のことひとつ…

「人国記」より「石見国国民性」を読む

石見国 石見の国の風俗は、丹後の国に異ならずして、偽りばかりにて実ある人稀なりと知るべし。これも隼・鷹は吉(よ)し*1。人の風俗、曾(かつ)て*2好むべからざるなり。実ある人は千人に一人も稀なり。智ある人は日々夜々に悪心を挟(さしはさ)み、言語…

武田信玄の愛読書「人国記」より「播磨国国民性」を読む

播磨 当国の風俗は、智恵ありて義理を知らず。親は子を誑(だま)し、子は親を欺き、主は被官に領地を少なく出だして、好き人を掘り出し度とこころざし、被官も亦忠勤を二段にして、調儀を以て、所知を得ることを計る。これ偏に盗賊の振廻(ふるまい)、侍は…

天正18年7月19日小貫頼久宛嶋清興書状(部分)を読む???

旧聞に属するが、嶋左近の書状を読んでみたい。 www.shikoku-np.co.jp (折紙) (折封ウハ書) 「小大蔵*1殿 御陣所」 (前略) 申候て見可申と被申候を 先可被仰出是も御分 前次第□(候)先々家中へハ 用意之儀急度被申越 候て可然と申候よし然者更ニ 昨夕…

ジビエとしてのカワウソ

小動物として大人気のカワウソだが中近世では食用とされていたらしい。 永禄11年2月10日『大日本古文書 益田家文書之二』344号文書には次のように見える。 於藝州吉田御一献之御手組 初献 御引渡 御湯漬 しほひき*1 ふくめたい*2 かいあわび*3 さかひて*4 か…

参勤交代と「一所懸命」

「一所懸命」とは文字通り「一所」=土地を守るために、命を懸けることを意味する。 主君から土地を与えられることを「御恩」といい、それに対して主君の命にしたがうことを「奉公」という。この双務的関係を西洋史にならって「封建制」という。これは郡県制…

文久元年9月16日幕領村々名主中宛皇女和宮下向につき触書写を読む 「写」の構造

前々回読んでみた文書は写であるが、二重の写である可能性が高い。写真が「部分」なので断定はできないものの、どの部分が「本体」で、どの部分が書き加えられたものか、少々考えてみたい。 japanesehistorybasedonarchives.hatenablog.com まず「本体」にあ…